2007年10月1日月曜日

記憶とは?図:海馬(かいば)と長期記憶


図:海馬(かいば)と長期記憶
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2007.09.30
Vol.2377                


『2/3の不在』

MAN WALK INTO A ROOM





ニコール・クラウス Nicole Krauss
坂本憲一 訳 
出版:アーティストハウス 2004年
定価:1680円(税込)
ISBN4-04-898182-X


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NO.2217「ヒストリー・オブ・ラブ」の著者の第一
作。まあ、あの「ヒストリー・オブ・ラブ」の作家が
その前に書いた小説だということで、私も後追いして
みました。もちろん、題名だけはそれ以前から知って
おり、注目はしていたのです。週刊お奨め本のsivaさ
んも早くから取り上げていました。    

ネヴァダ砂漠で、一人の男が警察に保護された。彼の
名はサムソン・グリーン。36歳。コロンビア大学の
英文学教授で、8日前から行方不明だった。脳の腫瘍
を除去手術後、サムソンは36年間のうち、24年間
の記憶を失っていた。

目覚めたサムソンの傍らに、美しい女性がいた。それ
は妻アンナだったが、家に帰った二人はもうもとの二
人には戻れなかった。サムソンには記憶に対する喪失
感がなく、取り戻したいという欲望もない。アンナに
はそれが努力の放棄と見えてしまう。家を出たサムソ
ンに深夜、レイ・マルコムという科学者から電話がか
かってきた・・・・・

あらすじは、かなり前から知ってはいたものの、プロ
ローグ部分が「ヘ?」と驚くしろもの。1957年の
ネヴァダ砂漠での水爆実験を描いているのです。そこ
からいきなり2000年五月に時間は飛びます。これ
がずーっと気になってしょうがない。いったいどう物
語はつながっていくのか。

ただの記憶喪失とはどうやら違うようです。12歳ま
での記憶しかないとはいっても、サムソン本人の精神
は大人。ただ12歳までの記憶しか残っていないだけ。
むろん、母親がその間に亡くなったことも知らない。
妻と結婚したことも知らないし、自分が大学教授とい
うことも知らない。家に帰ったサムソンと妻アンナと
のやり取りは、哲学的な物思いを連ねた文章が続き、
この部分が私はたいへん好み。「ヒストリー・オブ・
ラブ」に通じるものがある。

「アンナは深紅色のサクランボが灰色の脳組織に巣く
っているさまを想像した」

「心にとって、一度も存在しなかったものをどうやっ
て懐かしめばいいというのか?」

『わたしはあなたを失ったのに、にもかかわらずあな
たはここにいる。わたしをなじるためにね』

『問題の腫瘍を取りもどすんだよ!』

静かな前半部分が終わり、後半はスラプスティックで
かなり映像的なストーリー構成。「ヒストリー」でも
思いましたが、この作家の資質は映画向き。サムソン
が砂漠で遭難するシーンや、病院襲撃シーンなんての
は、前半と打って変わって、冒険小説じみています。
もちろんこの後半も面白い。

記憶の移植という、SFタッチのテーマなのですが、
それほどSFを意識する必要はありません。人間にと
って記憶とは何か。共通する記憶を失えば関係は壊れ
るのか。なんだかそれを思えば、サルトルの「嘔吐」
をついつい連想させる前半部分。だから、私もつい惹
かれてしまったのでしょうか。小説としての完成度で
は「ヒストリー」に比べてまだまだという感がありま
すが、荒削りながらもこの作家の最もいいところがあ
らわに見える。ただ、これを難解と感じる向きもある
かもしれません。

3時間ちょうど


太極拳足を上げたらぎっくり腰


評価  ★★★★




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評価について

☆☆☆☆☆・・・・・何が何でも読みましょう
★★★★★・・・・・めったに読めない逸品       
★★★★・・・・・・なん読お薦め本      
★★★・・・・・・・好み次第だけど、平均点以上     
★★・・・・・・・・他に本がなければ         
★・・・・・・・・・時間のムダを覚悟するなら           

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