2007年11月26日月曜日

SEICHOU toha ? BUNGOU ka?

2007.11.25
Vol.2432                


『文豪』







松本 清張(まつもと せいちょう)
出版:文春文庫 2000年
定価:590円(税込)
ISBN4-16-710687-6


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ご本人が「文豪」と呼ばれるかどうかは知りませんが、
案外、文豪という呼び名そのものが嫌いなような、松
本清張。権威にことごとく反発していたような人生で
したからね。本書は、その松本清張が、明治の文豪た
ちについて描くという小説。とは言っても、その題名
のとおり、というのは最初の「行者神髄」だけでしょ
うか。この作品では坪内逍遥を描き、「葉花星宿」で
は尾崎紅葉と泉鏡花の師弟関係、「正太夫の舌」は斎
藤緑雨を描きます。

青少年向けの逍遥伝を出版社から依頼された「わたし」
は、伊豆にある逍遥の家を訪ねてみた。今は、資料館
のようになっている。そこでわたしは、奇妙な男に出
会った。逍遥の人生には躁と欝が繰り返して現れると
言い、その原因には妻センがあると言うのだった。男
の態度に苦々しいものを感じつつ、わたしはその男の
話に引きこまれた・・・・・

「行者神髄」

尾崎紅葉は明治三十六年に東京帝国大学医学部附属病
院へ入院した。病名は知らされなかったが胃がんだっ
た。紅葉は退院して家で養生することにしたのだが、
すぐにしたことは、鏡花の女性問題を片付けることだ
った。鏡花は神楽坂の芸者桃太郎と同棲していた。病
床からの叱責にもかかわらず、鏡花は桃太郎と別れる
のを拒んだ・・・・・

「葉花星宿」

坪内逍遥の書いたものってのは、私は読んだことがあ
りません。今後も読む機会はなかろうと思われます。
関心もありません。同時代の二葉亭四迷は「浮雲」く
らいは読みましたが。写真で見ると、まさに謹厳実直
という坪内逍遥。今ではほとんど省みられることはな
い文学者。近代文学研究の分野では研究の対象になる
のかもしれません。

全351ページのうち、208ページを占める「行者
神髄」。小説の技巧としても、冒頭から謎の男が登場
するという展開には、いかにも松本清張らしさが出て
います。清張にはわりとあるパターンと知りつつも、
つい惹きつけられてしまう。文中の「わたし」にそれ
ほど動きはなく、描かれているのは逍遥のエピソード
だけ。

『失礼ですが、あんたは逍遥のことは書籍の上でしか
ご存じないようですな』

『ほんとうの対手は山田美妙斎だったのです』

「いったい、あの男は何者だろうか」

「この秘密はだれにも分っていないと逍遥は思いこん
でいたのであろう」

逍遥の妻の秘密。ここに書かれていることが実際のこ
とであるとしても、なんだかこれでは逍遥の妻が少々
気の毒な気がします。ここまで悪く言われるほどのこ
とはないかと私は思う。それより逍遥自身の性格に問
題があるのではと疑えばきりがない。

紅葉と鏡花の関係は、後に鏡花が書いた「婦系図」で
よく知られるようになりました。「真砂町の先生」と
いうのが尾崎紅葉なのですね。「切れるの別れるのッ
て、そんな事は芸者の時に云うものよ」という名セリ
フで有名。そのことがさらに詳しく述べられています。
「正太夫の舌」は斎藤緑雨のことですが、緑雨は文豪
ではないでしょうが、樋口一葉との関係で出てくる名
前というくらいの認識。

「行者神髄」は一読の価値あり。

2時間45分


同姓で古い方と呼ばれても


評価  ★★★★

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